大判例

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大阪高等裁判所 昭和30年(う)1934号 判決

原判示事実は、原判決の挙示する証拠によつてこれを認めるに十分である。被告人の検察官に対する供述が任意にされたものでないと疑うに足りる証跡は記録上存在しないから、原判決がこれを採つて事実認定の資料に供したのは違法ではない。

次に、弁護人は、原判決が被告人の検察官に対する供述調書の自白を唯一の証拠として被告人とその妻戸田幸子との共謀関係を認定したのは、刑事訴訟法第三百十七条、憲法第三十一条、第三十八条の解釈を誤り適用したものであると主張するについて案ずるに、前記の供述調書の内容は、被告人は、生活に窮したところから、その妻戸田幸子と、商店街で万引しようと相談し、幸子が買物籠を持ち、二人で原判示の隅田周蔵方店舗に至り、被告人は二、三歩退つた所で見張りをし、幸子が店頭に陳列してあつた反物の中から一反を盗み取つて右の買物籠に入れ、二人で電車に乗つて帰つて来た、というのであるが、原判決が補強証拠として援用している河村嘉三郎の検事に対する供述調書の内容は、同人は原判示の隅田周蔵方の店員であるが、本件の絹裏地は、原判示の頃店頭に陳列しておいたところ、朝お客さんが見て衣料切符を取りに帰り夕方買いに来た時にはもうその品物が見当らなくなつていたから、誰かに盗まれたものと思う、というのであつて、後者は窃盗行為自体についての裏付けとはなるが、被告人とその妻幸子との共謀関係を直接裏付けするものでないことは、所論のとおりである。しかし、自白を補強するべき証拠は、必ずしも自白にかゝる犯罪事実の全部にわたつてもれなくこれを裏付けるものであることを要せず、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りるのであるから、本件のように、窃盗の現場において見張りをすることによつて共同正犯たる罪責を負う場合に、窃盗行為自体についてこれを裏付けするに足りる証拠が存する以上、共謀の点について自白のほかに証拠がなくても有罪の認定をするにさしつかえないと解するべきである。然らば、原判決には所論のような違法はないから、論旨は理由がない。

(裁判長判事 松本圭三 判事 山崎薫 判事 辻彦一)

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